設立の趣意
外科手術を受けた患者は程度の差はあるが、術後痛を経験する。急性期の術後痛は通常、創傷治癒の過程で数日あるいは数週間で自然に軽快するが、近年、患者によっては、術後数か月から数年に渡り痛みが遷延し、痛みのために日常生活が障害される、慢性術後痛に注目が集まっている。国際疼痛学会は2017年を術後痛克服年とし、急性術後痛のみならず慢性術後痛についても取り上げ、WHO国際疾病分類(ICD-11)にも慢性術後痛が病名として掲載されるなど世界的に慢性術後痛への関心が高まっており、欧米から始まって本邦でも疫学調査や予防法に関する研究が報告されるようになった。そこで、医療におけるQOLの向上が求められる中で、周術期から術後長期にわたる疼痛治療の重要性が注目を浴びている。慢性術後痛に関して、医療者ならびに手術患者双方に対して正確な情報を広報・教育していくことが求められている。しかしながら日本においては術後痛を臨床及び研究の領域を統合して検討・議論する学会はなく、今後早急にこの分野の臨床・教育・研究の発展を進める必要がある。また、急性の術後痛をはじめとする臨床面においても、標準的なガイドラインが本邦では確立されていない。急性・亜急性術後鎮痛管理を発展させ、わが国における術後痛の慢性化を予防するためには、本邦におけるガイドライン策定が重要な課題である。以上の様な趣意の元、従来術後痛の慢性化をいかに防ぐかを考えるために設立した「亜急性期鎮痛研究会」を発展的に解消して日本術後痛学会の設立を目指したい。是非とも趣意にご賛同を頂き、本学会にご助力を頂ければ幸甚に存じます。